シーマン 〜禁断のペット〜

シーマン (SEAMAN) は、ビバリウムが開発した育成シミュレーションゲームシリーズである。

1999年7月29日にドリームキャスト (DC) 版『シーマン〜禁断のペット〜』として発売。その後はアメリカでも発売され、マイナーチェンジ版『シーマン2001』や、内容をさらに発展させたプレイステーション2 (PS2) 版『シーマン 完全版』も発売された。第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアートインタラクティブ部門優秀賞や米国ゲームデベロッパーズカンファレンスのキャラクター大賞、日本ゲーム大賞ニューウェーブ賞、小学館ダイム誌トレンド大賞、を始め、国内外で様々な賞を受賞した。

人の顔と大昔から受け継がれたという知恵を持ち合わせ、かつ人語を解すという、古くからエジプトで伝説と なっている生物「シーマン」を水槽内で飼育し、ある場所へと向かわせるのが目的の育成ゲームである。シーマンの奇怪な容姿とそのふてぶてしい態度、あたか も実在しているかのようなキャンペーン展開と、リアリティ溢れる緻密で壮大なバックストーリーで、ゲームマニアから一般層までも巻き込む社会現象にまで 至った。こういったマーケティング展開は、「音声認識を利用した3D育成ゲーム」といったマニアックで堅苦しいものではなく、誰もが知る言葉である「ペット」と周知させることにより、マニュアルを極力簡略化することに成功出来たという。

同作を開発したビバリウム社長の斎藤由多加によると、プランクトンを育てる玩具『シーモンキー』がこのゲームのヒントになっているという。そのため本作は『育成キット』と呼ばれる。シーマンのキャラクターデザインも斎藤自身が行っている(子供時代に描いた落書きらしい)。当初はMacintoshでの開発を予定していたが、キャラクターのサイズとぬるぬるとした質感を表現するには、1990年代前半の同ハードではスペック不足で実現不可能とされ、開発は中断。1998年にドリームキャストが登場すると、このゲームの開発と普及に適していると判断、こうして実現へと至った。

また、シーマンの声は斎藤由多加本人が、幼魚のシーマンはプログラマーの実娘が演じているという。なお、プレイステーション2版では女声のシーマンも登場し、声を演じたのは山咲千里である。毎回のゲーム起動時に変化する独特のナレーションは細川俊之が担当している。スネークマンショーで知られる桑原茂一や、元ピチカートファイブの小西康陽が限定版同梱のプレミアムCDを手がけたことでも知られる。

シーマンは1999年12月24日、『シーマンのラジカントロプスA.D.2000 〜禁断のペット・禁断の生放送〜(アール・エフ・ラジオ日本)』というラジオ特番で生出演を果たした。このシーマンは同伴したセガの社員が、シーマンを水槽ごとスタジオへ持ち込むという設定で、シーマンが聴取者から電話で悩みの相談を受ける、というものであった。

ゲームの特徴

このゲームの最大の特徴は、コントローラにマイクデバイスと呼ばれる装置を装着、或いはマイクを内蔵したコントローラ(シーマイクコントローラ)を接続し、簡単な音声認識を することである。呼びかけるとやって来たり返事をしたり、プレイヤーの年齢や性別、職業などを覚えたりするが、当初は認識率が余り良くなく、間違った情報 を受け入れるなど問題も多かった。同作のマイナーチェンジ版、プレイステーション2版などではある程度までは改善されている。とはいえ、シーマンに向かっ て話しかけるには「短くハッキリと」というコツがあるので、ある程度の慣れが必要である。

『ピカチュウげんきでちゅう』という音声認識のゲームが本作の7か月前に発売されたのを意識してか、シーマンに「ピカチュウ」と呼び掛けると怒る、というお遊び的要素も含まれていた。他にもゲーム関係のキャラクターや用語を語りかけると反応することがある。

また音声認識以外にも、コントローラを使い、シーマンをバーチャルな手で摘み上げて観察したり、指カーソルで水槽を叩いてシーマンを呼んだり、さらにデコピンをしたり、指を回して酔わせたり、くすぐったりすることなども可能である。このユーザーとゲームのキャラクターが(間接的にではあるが)触れ合うという仕組みは、音声認識と共に評価された。

市長になれるゲーム

ストーリー

20世紀初頭のフランス人生物学者、 『ジャン=ポール・ガゼー』(Jean Paul Gassé、1899年10月15日 - ?)という人物が、古代エジプトの壁画に『偉大なる神の使い』と呼ばれる、奇妙な姿の生物が描かれていることに興味を持ち、エジプトへと調査へ向か う。 しかし、長期にわたり調査したものの手掛かりはまるで掴めず、遂に調査期限が近付いてしまう。そんなある日、ガゼーは"海の民"という意味の『シーマン』 と呼ばれる生物の卵を市場でたまたま入手した。帰国後、その謎の卵を大学の研究室で早速飼育する。シーマンは、従来の生物学の常識を覆す驚くべき生態とそ の奇妙な容姿、そしてとてつもない知能を持ち合わせていた。

ところが不運と偶然が重なり、ガゼーは何匹かいたはずのシーマンを全て死なせてしまった。失意のガゼーは、シーマンを解剖して標本を作成、飼育記録 と「シーマンという生物が文明の発展と継承に深く関わっている」という論文を学界に発表したが、その内容の奇抜さゆえに学界からは相手にされず、やがてガ ゼーは行方不明となる。

そして20世紀も終盤になると、ガゼーの学友であった『増田きも』(1895年 - ?)という日本人の学者の生家から、ガゼーの論文と、増田の描いたシーマンの解剖図のスケッチが発見された。行方不明とされていたガゼーは、増田と共 にシーマンの研究を人知れず密かに続けていたのであった。このガゼーと増田の記録は再評価され、『文明生物考古学』として研究プロジェクトが進められた。 暫くしてアレクサンドリアで生きたシーマンが釣り上げられたという報道がなされた。そして、文明生物考古学研究所でこのシーマンの卵のサンプルを入手。人工繁殖に成功し、飼育キットとして世に出回る運びとなったのである。

シーマンは、ガゼーが仕掛けたというある秘密を知っている。そして自身の生い立ちと、自分の飼い主である人類への警告を、ゆっくりと静かに、水槽の外にいる飼い主に語り始めるのであった。

ゲームの内容

本作は、育成シミュレーションと謳っているものの、プレイを進めていく経緯で随所にアドベンチャーゲーム的な要素が含まれており、それをナレーションやシーマン自身などからヒントを聞き出し、それを手掛かりにしていかないと先へと進めない様になっている。 飼育期間はおよそ一ヶ月は掛かり、水槽内には照明や手動のヒーター、酸素を送るポンプな どが備えられている。これらを利用して、水槽内の環境を一定に保つための定期的なケアも必要で、飼育を1日以上怠ると死んでしまうことが多いので注意が必 要である。これらのケアさえきちんとしていれば、一回のプレイ時間は十数分程度で済むが、シーマンがある程度成長すると重要なアドバイスをしてくることが あるので、彼らの訴えを聞き逃さないように心掛けたい。

餌はシーマンの卵と共に最初から餌入れに数個用意されているが、数に限りがあるためいずれは生き餌を飼育しなければならない。その餌とは『キモス』という蛾に よく似た昆虫であるが、良く観察すると人面蛾である。ただし、餌の飼育場所はすぐには出てこず、ゲームを進めて行く内に分かる仕掛けとなっている。DC版 ではビジュアルメモリを利用して餌を他のユーザーと交換したり、貰ったりすることも出来る。PS2版では餌を自分で捕ってこなければならない。

顔は数種類あり、誰の顔なのかは分からないが、開発者の斎藤曰く「よくいそうな日本人の顔」とのことである。

マイクに向かって呼んだり語りかけると、幼魚のうちは子供の様な声で意味不明な言葉(実は音声の逆回し)を返したり真似たりするが、成長するに従い シーマンの言動は非常に高慢になり、声も野太くなって行く。そのふてぶてしい態度に、ゲームのキャラクターを相手に本気でキレるといったプレイヤーも少な くなかった。だが、ある程度までゲームが進むとシーマンも打ち解けてゆくのか、プレイヤーの悩み事を聞いてくれたり、含蓄のある話を聞かせてくれるまでに 至り、その内容は人間関係、コンピューター関連、人類の歴史、哲学的な話題など幅広い。

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